最高の試合。井上尚弥vsノニト・ドネア戦の感想。

こんにちは!

non-noです!

 

井上尚弥vsドネア戦。

もう最高でした。

とにかくレベルが高い。それは言うまでもないのですが、ベテランのドネア選手が意地と経験を見せつけてくれました。

結果は知っての通り、判定3-0で井上選手の判定勝ち

 

まずは井上選手について。

2R途中で右目上をカットし、出血。

鼻血も出ていたようで、いつもに比べると繊細さにかけ、大味なボクシングになっていたという印象。井上選手の強さは圧倒的で、これまでほとんどきれいなままの顔で勝利していました。流血、という経験が初めてだとか。

カットを気にしていつもよりディフェンスに意識を割いていたようで、ハプニングの影響は小さくはなかったでしょう。

 また、直近の試合では2R以内のKOで勝利してきているため、持久戦の経験に乏しいこと。強すぎるが故に、長期戦になった時、流血というハプニングがあった時の経験が不足しているという弱点が露呈されたようにも見えました。

(そもそも強すぎてパンチをもらわないし、長期戦に持ち込むことすら至難なので、弱点といえるかどうか微妙ですけども。)

 

それに加えて、ドネア選手の左のカウンターの精度が高い

終始井上選手のパンチに合わせようと狙っていましたし、実際に合っていました。

タイミングばっちりであそこまで狙われると、井上選手も大胆には攻めづらい。

井上選手の苦戦の裏には、カットというハプニングがあったことももちろんなのですが、もちろんドネア選手の強さもありました。

 

ドネア選手は経験からか、プレッシャーをかけるのが非常にうまく、じりじりと嫌な間合いを取られ、それに焦れて井上選手が手を出したところを高精度の左がカウンターで飛んでくる。しかもただ待っているだけでなく、圧をかけて前に出ながらカウンターを狙ってくるので、井上選手も攻めあぐねている。序盤の展開としてはこんな感じでした。

 

流れを変えたのはやはりボクシングの基礎、ジャブでした。

井上選手が距離感を修正し、ジャブで相手を制するようになります。

半面ドネア選手は手数が少なく、打たれたら打ち返すというカウンタースタイルを徹底。井上選手、ジャブは制しているものの、カウンターを警戒して大きなパンチはなかなか打ち込めません。

 

それでも、出血になれてきた井上選手は切れを取り戻し、ボディ、右のストレートなど、パンチのバリエーションを増やしていきます。

ところどころ的確にヒットさせますが、ドネア選手は効いている素振りを見せず、じっとカウンターの機会をうかがっています。

この状況にまたも井上選手は焦れてしまいます。(彼の実力からすると、焦れたというより、強行突破しに行ったと言った方が正しいでしょうが。)

大きなパンチを増やしながら、ドネア選手のガードをこじ開けようとしました。

この展開をドネア選手は待っていたのです。

狙いすましたカウンターをしっかり決めて見せて、井上選手の出血はだんだんとひどいものになっていきました。

当てても当てても、カウンターを執拗に狙ってくるし、効いている素振りも見せない、自分の出血はひどくなる。。

井上選手に焦りも当然出てくるでしょう。

その隙を、ドネア選手は見逃してはくれませんでした。

9R、ドネア選手がコンビネーションをまとめて、井上選手に有効打。

流血はさらにひどくなり、正直ここまできれいにパンチをもらっている井上選手は初めて見ました。

ここで、井上選手は血まみれの中、相手を挑発してみせました。

初めてといっていいほど珍しい凌ぐ展開。

井上選手はドネアがとったようにカウンターを狙っていました。

挑発も不気味で、ドネア選手は警戒して仕留めきれません。

なんとか凌いだものの、流血はかなりひどく、たとえ判定まで持ちこたえたとしても、ジャッジの印象はよくない。

 

これ、マジで危ないんじゃないの??

 

しかし、どれだけ出血がひどくなろうとも、井上選手の表情は明るく、楽しそうでした。強すぎるが故に、本気で長時間戦うことがなかった彼にとって、苦戦していてもドネアとの12Rは本当に楽しいものだったのはないでしょうか。

ハプニング、長期戦、そして若いころからの憧れのボクサー、ドネアの圧。

ここを越えれば、さらに強くなれる・・・。

ここまで18戦18勝16KOと圧倒的な成績。ここで往年のレジェンド、ドネアに土をつけられるのもまた、ドラマか。。そう私は思い始めていました。

 

と、思いきや、井上選手、10R終了後、観客席を煽ります。

 

え、そんな余裕あんの??

 

私のような素人はそう思ってしまいましたが、効いているという実感があったのでしょうか。実際に11R、左ボディーを突き刺し、ドネア選手からダウンを奪います。

 

この左ボディー、フック気味の鋭いパンチだったんですが、これ、この試合ほとんど打っていなかったパンチなんですよね。

 

もしかして、布石??

 

井上選手といえば、強烈なボディーへのパンチで幾度となくダウンを奪っています

にも拘わらず、この試合に限って言えば、ドネア選手のカウンターを警戒してか、ほとんどボディーには大きいパンチは放っていませんでした。

観客を煽って、カウンターの恐怖をぬぐい、ここ一番での自分の得意なパンチに懸けた・・?

あるいはドネア選手がダメージを受けているという実感があったので、ガードを顔面に集中させているところにボディー、という理屈かもしれませんが、この左ボディーが結局決勝打になりました。

うーむ、あの局面での駆け引きは本当に面白かったです。

 

そしてドネア選手。

本当に感動しました。

一つのカウンターを見ても、相当研究を重ねたんだなということがわかりましたし、圧倒的なパンチ力を誇り、スピードでも上を行かれる井上尚弥相手に、そのカウンターを実行する勇気。もはや2Rで有効打を当てて、井上選手にキャリア初のカットを体験させただけでも賞賛に値するのですが、そこからの意地には心を打たれました。

 

ドネア選手は、45戦40勝5敗、26KOと輝かしい経歴を誇りますが、すでに36歳

近年では負けが込み始め、もう衰えた、「過去の英雄」という声も多く、井上選手のKO勝ちを予想する声も多かったんです。

ふたを開けてみれば、今までの相手でもっとも井上選手を追い詰めたといっても過言ではないでしょう。

「世代交代だ」と井上選手は決意してこのリングに上がりましたが、かつてあこがれていたレジェンドはそう簡単には次世代に席を譲ってくれません。

なんといってもそのメンタル。

井上選手の強烈なパンチを何度浴びても、顔色を変えません。

効いてないよ?というように鋭いパンチを返してきます。

 

あれ、効いてない?

 

と私も思っていました。

しかし、11R、ボディーでダウンしたドネア選手。

効いていたんだ、やはり。

井上選手のジャブは相変わらずキレッキレでしたから、ジャブといえどもダメージの蓄積はあったはず。それに加えてストレートももらったりしていました。

それをおくびにも出さず、ひたすらカウンターを狙い続ける精神力。

「まだまだ俺はやれる」というプライドと決意がにじんだその姿が走馬燈のように思い出されて、ダウンした時には涙ぐんでしまいました。

そして10カウントギリギリで立ち上がる姿。

もう11R、井上選手はディフェンス力にも長けているので、ダウンを取って逆転は難しい。何より、力の差は戦っていたドネア選手が一番わかっていたはず。

 

それでも、彼は立ち上がった。

 

あと0.数秒、座り込んでいれば、もう苦しまなくてもいいし、パンチをもらうこともない。なぜそこまでできるの・・。涙

彼をもう一度奮い立たせたのは、経験と意地ももちろんあるでしょうが、井上選手へのギフトという意味合いもあるのではないでしょうか。

 

こんなの想像でしかないですが、次世代を担う井上選手に、自分の姿を、12Rまでの濃密な戦いの時間を、今までの自分の経験を、最後まで伝えようとしてくれたのではないかと。

きっとそうやって、ドネア選手も伝えられてきたんじゃないでしょうか。40もの勝ち星、5つの敗戦。すべてが、相手が限界まで戦って伝えてくれたギフトとなっているのではないでしょうか。

そうやって次世代に、自分と、自分が戦ってきた相手を引き継いでいく・・。

 

「遠い過去と遠い未来をつなげるために、そのためにオレはいるんだ」

 

ヒカルの碁」の主人公、ヒカルのセリフを思い出してしまいました。

最後の井上選手とドネア選手のハグ。

井上選手からドネア選手のもとへ向かい、お互いの健闘を称えあっています。

きっとドネア選手のプライドと経験が、井上選手にしっかりつながったことでしょう。

 

お互いを最大限にリスペクトしあう二人に試合って、こんなにも気持ちがいいんですね。

テレビでしたが、ライブで見れて本当に良かったと思う試合でした。

ここから井上選手はさらなる高みを目指して、ドネア選手の経歴を超えるような、そんなボクサーになってほしいです。

そしてドネア選手。間違いなく最強の対戦相手であり、最高の対戦相手でした。

引退するのか、これからのことはわかりませんが、本当に尊敬できる姿でした。

まじで二人ともかっこよかった!!

伝説になる名勝負でした!!