「不気味」な短編集。「海の見える理髪店」感想。
こんにちは!
海の見える街で育ちました!non-noです!
私が住んでいたのは海のすぐ近くだったので、海はよく見てましたね!
ちなみに私が育ったところは特に何もありませんが、海も山もあるので、両方を楽しむことができましたね!
というわけで!荻原浩さんの「海の見える理髪店」を読了しましたので、感想を書いていきたいと思います!
「海の見える理髪店」という物語自体は40ページ程度の短編となっており、そのほか5編の短編が収録された短編集になっていました。
仕事の昼休憩によく読書しているのですが、短編はキリがいいところがあっていいですね!
雰囲気が二転、三転する
すべての短編を読了してみた感想ですが、やはり表題にもなっている「海の見える理髪店」が別格の面白さでした。
短編らしく、ちゃんと仕掛けもあって、語り口なども設定に準拠していて読ませる力がありました。
まず最初は別段変わったところもなく、つかみどころのない展開が理髪店の老店主のつかみどころのない語り口で語られます。
その店主の話がだんだん面白くなっていって、その先が気になってきます。
しかし相変わらず展開が読めない。
中盤まで読み進めても、どういう話か分からないんです。
タイトルもまたどういった内容の話かわかりにくくさせていますよね。
しかし、あるシーンから雰囲気が一転します。そこの展開が見事で。
(詳しくはネタバレになるので書きませんが、読めばわかると思います)
「そういう展開になるのか・・」
と思わせてからまた・・・。
この先は本当にネタバレになるので控えますが、ぼやけた霧の中を進んで、やっとたどりついた道も正解じゃなくて・・・。みたいな感じですかね。
老人の語りが面白い
なんか聞いてる限り、面白くなさそうww
と思った方もたぶんいらっしゃいますよね笑
私も最初は、こんな感じで老人の一生を語っていくのかな?といぶかしがりながら読み進めていました。
それでも読み進められるのは、語り口となる老人の話が面白いからです。
セリフ回しも本当にうまくて、ただの客と理容師の会話なのにすらすら読めていまいます。その語りとセリフがまず物語の読みやすさを作っていますね。
そして読み進めた先で読者をあっと言わせてくれるのですが、その前にもしっかりカモフラージュを入れているあたり、物語としての完成度が高いです。
というわけで、ここで、一つ、私の好きな一節を抜粋してみます!
「まあ、父親ってものは、とくに昔の父親は、子どもに可愛いだの、期待しているだのなんて、金輪際言ってくれないものです。でも、人さまには負けたくなくても、息子にだけは負けてもいい、心の中じゃそんなことを思っているものなんですよ、いや、ほんとうに。」
このセリフめちゃくちゃ好きです!割と冒頭のセリフなんですけど、こういう感じでずっとセリフが面白かったり深かったりするんですよね。だから展開としては髪切ってるだけなんですけど、飽きずに読めます!
しかもこれ、最後まで読んでから思い返すとまた深い・・・。
全体的な感想は「不気味」ということ
もちろんいい意味で、ですよ?笑
他の短編も読みましたが、どれも全体的な雰囲気が何かありそうな、気味の悪さを醸し出しているんですよね。それが気になってつい読み進めてしまいます!
そういった雰囲気は短編と相性ばっちりで、全体を通してすらすら読めるタイプのお話でした。
しかし締め方や構成を見ると・・。やはり「海の見える理髪店」が頭一つ抜けていますかね。他の作品はある種その独特の雰囲気に頼ってしまっている感があるかなと。
そういうホラーとかではない、ちょっとした怖さを楽しみながら、読みやすい物語を読みたい人にはお勧めできる作品ですね!
しかし、「海の見える理髪店」だけは一つ上の領域にある作品だと思いますので、これだけでも一度読んでみてほしいかなとも思いますね!
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!